トンデモな世界

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(3)ロマン


俺が中学2年生の時、学校から帰ったら、庭に真っ赤なバイクが置いてあった。

イタリア製のバイク、ドゥカティである。

家の中に入るとオヤジとじいちゃんが話をしている。

「お父さん、こんなもの譲り受けてどうすんですか」

「もちろん、乗るんじゃよ。マナブも乗るか」

マナブというのは、俺のオヤジ、つまりじいちゃんの息子である。

「結構です」

「ロマンを求めてバイクで冒険するのが男じゃろ」

「それよりお金はどうするんですか」

「おお、友人が安くしてくれたんじゃ。マナブ、支払いは頼むぞ」

「冗談じゃないですよ。80万円なんて金、どこにあると思ってんですか」

「ははは、分割でよいといっとるぞ」

「第一、 お父さん、大型二輪の免許持ってるんですか」

「え、そんなもんが必要なのか」

「はぁ」

オヤジはじいちゃんに愛想つかしてため息。

「マナブ。お前はもっと夢を見るべきじゃぞ。男だったらロマンに生きろ」

「お父さんこそ、その夢見るクセやめてもらえませんかね」

俺のオヤジはじいちゃんとは正反対の性格で、生真面目で現実主義者。

役所に勤め、お堅いことこの上ない。

じいちゃんは、せっせと教習所に通い(この金もオヤジに出させてる)、何とか免許をとると颯爽とバイクに乗って出掛けた。

そして、そのまま3ヶ月ぐらい帰って来なかった。

その間、ちょこちょこと絵葉書が家に届いた。

じいちゃんからで、今、襟裳岬だ、とか信州だ、とか阿蘇山だ、とか書いてあった。

本当に行ったのか、いまだによく分からない。

3ヶ月経って帰ってきた時には、真っ黒に日焼けして白い入れ歯をニッと出して笑い、

「日本中でロマンを味わってきたぞ。次は世界一周じゃ」

と子供のようにはしゃいでた。

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